政府と与党、政策の調整不全 外国人就労1年超→3年に

自民党は12日、非熟練労働者の受け入れ資格である技能実習に代わる新制度の提言案を示した。当分の間は特定の企業で3年間の就労を基本とする内容で、原則1年超とした政府の有識者報告書から後退した。自民党派閥の政治資金問題を巡る混乱は政権与党の政策調整に影を落とす。

現行の技能実習制度は原則3年間は転職を認めていない。過酷な労働条件が多くの失踪者を生む要因の一つとなったことから、政府の有識者会議は転職制限の緩和にカジを切ったはずだった。

有識者会議が11月にまとめた最終報告書は、同一企業で1年超就労すれば転職できる原則を盛り込んだ。業種ごとに転職が可能になる期間を延ばせる規定も設けた。

党の特別委員会で12日に示された案はそれが一転、3年間は特定の企業などで就労すべきだとする内容に戻った。

転職時は本人と転職前後の両企業が合意することが望ましいと指摘するなど雇用主を守る姿勢が色濃い。引き抜きを防止するための措置を講じることや、外国人材が地方から都市部に流出することを防ぐ策を講じるよう求めている。

出席者によると一部の議員からは「2年が適当ではないか」という反対の意見も上がり、提言案の公表は見送りとなった。

政府は有識者会議の報告書と党の提言を踏まえ、2024年の通常国会に関連法案を提出する段取りを描いていた。双方の主張が異なることになると、法整備のスケジュールを含め再考を迫られる。

政府が技能実習制度の改変に動いたのは、外国人を劣悪な環境で労働させるケースが相次いだためだ。人権に配慮して外国人を受け入れる制度を整えなければ、日本の国力低下とともに人材が早晩集まらなくなるとの危機意識がある。

一方、自民党は地方の人手不足に悩む中小・零細事業者を支持基盤にする議員が多い。足元で有効求人と求職の差はおよそ40万〜50万人で推移している。有識者会議の案を採用した場合、幅広い業種で人手不足は深刻になるとの懸念は少なくない。

自民党最大派閥の安倍派を中心とする政治資金問題で、岸田文雄政権の求心力は損なわれつつある。政策を仕切る実力者も不在で、政策の意思決定の過程で政府と自民党の間に生じる温度差を埋める機能が一段と低下しかねない。

人手不足は深刻で外国人材の受け入れ拡大は結論を先送りできない課題の一つだ。政治の混乱により、賛否が割れたり国民に負担を求めたりする政策が決められない状況は経済にも打撃となる。